伝統の逆襲/奥山清行
ということでまず1冊目は奥山清行さんの「伝統の逆襲」という本です。GMやイタリアの名門デザインチームであるピニンファリーナで活躍された奥山さんが、日本と海外(主にイタリア、アメリカ)での考え方の違いを自身の経験から記し、今後日本の技を世界でも通用させていくにはどうすべきかを書いた本です。内容は著者がデザイナーであることから、デザイナーからの視点で書かれていますが、興味深い内容です。
特に中で印象に残っている内容は2つあり、1つは日本の特徴は2つあり、「想像(創造)」と「犠牲」だ、としているところであります。「想像」とは「思いやり」とも置き換えられ、日本人は相手のことを思いやることが得意のようです。ときにはそれが過剰になることもあるが、クリエイティブな面においてはまだ見ぬ顧客を想像し、解決策を出し創り上げていく様は創造とも言える。そしてもう一つは「犠牲」、つまり自分をある程度犠牲にしてでも全体をどうにかしようとする「自己犠牲」についても述べられています。これも使い方によってはよくないが、自分の位置を見極め、全体に対してどうすべきか、感覚として知り、そのためには自分は何を我慢すべきか、ということだ。そしてこのような「犠牲心」は、日本人の特徴としてよく言われる切り捨ての文化に通じるのではないかとも言われています。このような2つの特徴を奥山さんは日本のものづくりにおいて良い点と捉えているようだが、さらにはコミュニケーション能力が必要だと書かれています。そして、この能力が備わったとき日本人の活躍の場は大きく広がるだろうと。
次にもう一つの印象に残った内容は、これからは日本文化の良さを活かしたものづくりをしていかなければいけないと書かれています。日本文化の質の高い哲学を持ちながら、現代の生活に適したものづくりをしていく必要がある。そうすることで、国際化の進む中で他の国との差異を明確にし、日本ブランドを世界レベルのまでもっていけると。
私の中では上の2つ内容が印象に残っており、またこの本の大半を占める言いたい部分でもあると思います。奥山さんの地元山形をモデルに自分の海外生活からの体験を活かし、日本の地方のものづくりを変えていこうという意志が伝わってくる本です。
by mhikari3
| 2009-08-24 04:37
| Book